お久しぶりです、副業いぬです。
気がつけば前回の更新から3週間も経ってしまいました。3月という時期柄、本業の仕事がバタバタしていたり、年度末特有の社内のゴタゴタに飲まれたり……というのは半分言い訳で、シンプルにブログの筆が止まっていました。うちのダックス(マスコット)も「最近PCに向かってないワンね」という冷ややかな目でこちらを見ております(笑)。
さて、リハビリを兼ねた復帰第一弾は、最近ガジェット界隈(特にPCやスマホ好きの間)で大論争を巻き起こしている「BenchmarkBoost(ベンチマークブースト)」について、ガッツリ深掘りしてみたいと思います。
きっかけは、さいちょうさんによるREDMAGIC 11 Proの検証動画です。この記事では、この事例について確認されたことと、PCの消費電力を観察するだけでは判断できないことを分けて整理します。
でも、これを見て僕はふと思ったんです。
「スマホでこれが行われているなら、排熱が厳しいノートPCや、流行りのUMPC(超小型ゲーミングPC)でも、PCメーカーが同じような“ズル”をしているんじゃないか?」と。ただし、これは僕の疑問であり、特定のPCで同じ動作を確認したという意味ではありません。
そこで今回は、さいちょうさんの動画で話題になった「BenchmarkBoost」の仕組みをおさらいしつつ、普段からPCをいじっている僕の視点から、PCの消費電力や温度を観察する際の注意点を紹介します。
この記事には、私自身の実測結果として提示できる電力データはありません。以前掲載していた数値は出所を確認できないため、数値を使った比較表と電力・温度カーブ図の掲載を取りやめました。
少し長くなりますが、これを読めば「カタログスペック」の裏側が透けて見えるようになります。コーヒーでも淹れて、ゆっくりお付き合いください。
そもそも「BenchmarkBoost」って何が問題なの?
まずは事の核心からお話しします。
この記事でいうBenchmarkBoostは、ベンチマークアプリを識別し、通常とは異なる動作モードを適用してスコアを引き上げる問題を指します。通常のターボ動作や、処理負荷に応じた電力の変化そのものを、不正と呼ぶわけではありません。
これ、一見すると「フルパワーを出してくれるなら良いことじゃないの?」と思うかもしれません。でも、ここには大きな「落とし穴」があります。
「社長が視察に来た時だけ猛烈に働く社員」のメタファー
わかりやすいように、人間の仕事に例えてみましょう。
普段のオフィス業務。あなたは体力(バッテリー)を温存し、汗だく(発熱)にならない程度のペースで、淡々と書類を作ったりメールを返したりしています。これが普通のスマホやPCの動作です。
ところが突然、「社長(ベンチマークソフト)」があなたのデスクの横に視察にやってきました。
あなたは「ここは評価を上げるチャンスだ!」とばかりに、エナジードリンクを流し込み、タイピング速度を限界の2倍まで引き上げ、顔を真っ赤にして猛烈な勢いで仕事を片付けます。社長は「おお、君はすごい処理能力を持っているね!評価スコア150万点!」と書き残して去っていきます。
でも、社長が去った後、あなたはどうなりますか?
疲労困憊で倒れ込むか、その後の仕事のペースはガタ落ちになるはずです。そもそも、毎日そのペースで仕事をするのは物理的に不可能ですし、体温が上がりすぎて倒れてしまいますよね。
BenchmarkBoostの問題点はまさにここにあります。
「テストの時だけ見せる瞬間最大風速の数字を、あたかも『普段から常に出せる性能』であるかのように宣伝している」という点において、ユーザーの「実際の使用体験(実用性)」と「事前の期待値」の間に大きなズレを生み出してしまうのです。
このズレが引き起こす悲劇は、例えば「カタログスペックは高いから重いゲームもサクサク動くはず!」と期待して買ったのに、いざ遊び始めると5分で本体がアツアツになり、画面がカクカクして使い物にならない……という形で僕らに襲いかかってきます。
確認された事例と、通常の電力・温度制御との違い
同じ処理内容でアプリ名を変えた比較
2026年4月9日、UL SolutionsはREDMAGIC 11 Proと11 Pro+を3DMarkのランキングから除外したと発表しました。公開版と、名前を変更した非公開版を使い、同一のテスト内容で動作を比較した結果、アプリ名の認識による最適化が同社のルールに反すると判断したものです。
出典:UL Solutions公式発表。これは記事公開後に確認された情報です。私が所有するPCや、PC全般について不正が確認されたという話ではありません。
電力が変わること自体は不正の証拠ではない
CPUの消費電力は、処理内容や動作条件によって変化します。Intelも、ターボ動作や特定の負荷では一時的にTDPを超える場合があり、温度や電力供給の制限を受けると説明しています。電力が一時的に上がったことだけで、安全機能の解除や不正を断定することはできません。
温度の数値は測る場所と機器を区別する
CPU内部の温度と、本体表面の温度は別の測定値です。今回、元の電力・温度データの出所を確認できないため、特定の温度を全機器共通の安全限界や性能制限の基準として示すことはしません。
なぜスコアが重視されるのか(ここからは筆者の考察)
ここからは、数字が重視される背景についての僕の考察です。以下の社内のやり取りや図表は説明用の想定であり、特定のメーカーを取材して確認した事実ではありません。
「数字」は最大のマーケティング武器
僕らユーザーは、新しいスマホやPCを買う時、何を基準に選びますか?
デザイン、カメラ、価格……色々ありますが、最後の一押しになるのはやはり「性能」ですよね。でも、性能の良さって目に見えません。そこで登場するのが「AnTuTuスコア150万点!」「Cinebenchマルチコア◯◯点!」といった分かりやすい数字です。
メーカーのマーケティング部門(宣伝担当)からすれば、競合他社の製品が140万点を出しているなら、自社は絶対に141万点以上を出さなければなりません。たった1万点の差でも、ネット上の比較記事やレビュー動画では「A社の勝ち、B社は負け」と残酷にランク付けされてしまうからです。
冷却性能という物理的な限界との板挟み
本来、性能を上げるなら「チップを冷却する仕組み(ヒートシンクや冷却ファン)」を大きくすればいいんです。自作PCなら、巨大な空冷クーラーや本格水冷システムを積めば解決します。
しかし、スマホや薄型ノートPC、そして僕も好きなUMPCには、そんなスペースはありません。厚さ数ミリの板や、手のひらサイズの筐体の中に、超高性能な発熱体を押し込んでいる状態です。
設計部門(エンジニア)は「これ以上は熱で壊れるから無理だ!」と言います。しかし宣伝部門は「ライバルより高いスコアを出せ!」と要求します。
【説明用の想定:スコアと冷却設計のジレンマ】
| マーケティング・営業部門の要求 | 設計・エンジニア部門の現実 |
|---|---|
| 目的:「広告用に他社より高いスコアが必要!」 目標:「AnTuTu 150万点超え」「カタログスペックでの勝利」 |
制約:「薄型筐体ではこれ以上物理的に冷やせない!」 現実:「熱設計と部品の動作条件を守る必要がある」 |
| 妥協の産物(解決策)= BenchmarkBoost 「実用性は二の次にして、テストの数分間だけ限界突破させよう」 |
|
普段、会社の稟議や他部署間のゴタゴタを見ていると、この「現場の限界」と「数字を求める経営陣の圧力」の板挟み構造は、なんとも生々しく想像できてしまいます。どの業界も辛いですね(笑)。
スコアを高く見せたいという動機は想像できます。ただし、それが個々の製品の設計判断の理由だったかどうかは、この記事では確認できていません。
【観察編】PCの消費電力を比較するときの注意点
Cinebenchとゲームでは処理内容が異なるため、CPUの消費電力に差があるだけでは、ベンチマークを特別扱いしているとは判断できません。以下は動作を観察するための手順であり、不正の有無を判定するものではありません。
使うソフトと記録する条件
Windows PCでは、HWiNFO64などの監視ソフトでCinebenchやゲーム実行中の値を確認できます。機器名、電源接続、電源モード、ソフトの版、ゲームの設定、計測時間などを併せて記録し、何を測った数値なのかを明確にします。
記録1:Cinebench実行中の動作を観察する
HWiNFO64のセンサー表示で、CPU Package Powerなどの項目を確認します。表示される項目は機器によって異なります。最大値だけでなく、処理開始後の変化も記録します。ここで表示される値は、その条件で観測された値であり、ベンチマーク専用の電力上限だと断定できるものではありません。
記録2:ゲーム実行中の動作を観察する
別の計測として、開始時の温度や設定を記録し、ゲーム中の値を観察します。前の計測の最大値が混ざらないよう記録を分けます。CPUだけでなくGPUにも負荷がかかるため、Cinebenchと同じ電力になることを前提にしません。
結果から分かること・分からないこと
この比較で分かるのは、異なる処理を実行したときの動作の違いです。CPU負荷、GPU側の制約、温度、電源設定などを切り分けずに、「電力が低いから手抜き」「差がないから正常」とは判断できません。UL Solutionsの事例のような、処理内容をそろえた検証とは区別してください。
通常の最適化と、ベンチマーク専用の動作を区別する
アプリに合わせて動作を調整することと、ベンチマークを名前で識別して特別扱いすることは、分けて考える必要があります。メーカーの意図や内部処理を、消費電力の差だけで決めつけることはできません。
スコアを参考にするときも、どの条件で測られたものか、実際に使いたいアプリとどれくらい近い処理なのかを確認したいところです。
僕の好きなPCオーディオの世界でも似たようなことがあります。
メーカーの公式ページを見ると、カタログ上のS/N比(ノイズの少なさ)や歪み率は凄まじく優秀な数値が並んでいます。しかし、いざ手持ちのDAC(デジタル・アナログ・コンバーター)に繋いで、使い慣れたモニターヘッドホンで音楽を聴いてみると「数値は高いはずなのに、なんか音が平坦でつまらないな……」と感じる機材に出会うことがあります。
数字は決して嘘をつきません。しかし、「特定の条件下で意図的に作られた数字」は、必ずしも僕らの「心地よい体験」を保証してはくれないのです。
僕らが本当に求めているのは「数字」じゃない
長々と語ってきましたが、今回のBenchmarkBoost騒動から僕たちが学べるのは、「スペックシートの数字を買っているのではなく、日々の『体験(UX)』を買っているのだ」という当たり前で大切な事実です。
いくらベンチマークで150万点が出ても、10分ゲームをしただけで本体がアツアツになって持てなくなり、熱ダレで画面がカクカクになるなら、それは「良いガジェット」とは言えません。
これから新しいPCやスマホを買う時、YouTubeやブログのレビューを見る際は、以下の点に注目しているレビュアーを参考にしてください。
【騙されないためのレビュー動画・記事の見方】

結論として、最近の僕は数字上のピーク性能よりも「発熱が少なくて安定しているか」「持続的なパフォーマンスがあるか」を重視するようになりました。長く使う道具だからこそ、一発の速さより「息切れしないスタミナ」の方が大事だと痛感しているからです。
メーカー側も、そろそろ「数字のインフレ競争」から降りて、本当の意味での「長く快適に使えるチューニング」で勝負してほしいなと、一人のガジェットファンとして強く願っています。
最後に
さいちょうさんの動画は、こうした見えにくい業界の「ズル」を可視化してくれたという点で、本当に価値のある検証でした。まだ見ていない方は、ぜひ元動画もチェックしてみてください(検証への執念が凄まじくて惚れ惚れします)。
というわけで、復帰第一弾のブログ更新は、確認された事例と、動作を観察する際の注意点を整理した記事になりました。
書き始めたら楽しくなってしまって、思いのほか長文になってしまいましたが、皆さんのガジェット選びの参考になれば嬉しいです。
次回は……あまり間を空けずに、書ければいいなと思います。
それでは、また次回の記事で!

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